マウスピース矯正は抜歯をしない?最新の治療法とは

小山安徳
2020/09/18

矯正を行うに当たって、抜歯をするかしないかは一つの大きな分かれ目になると思います。それぞれにメリット・デメリットがあるのはもちろん口腔内は十人十色なので、「あなたに合った治療法」を選択することが最善です。マウスピース治療では、抜歯をするのか?今回はそんな疑問を解説していきます。

矯正における抜歯の誤解とは

「歯は抜かないのが1番」そのように患者に伝える歯科医師も少なくありません。もちろん、健康な歯を抜くことはあまり良いことではありません。

しかし、その人の顎の大きさ、それに対する歯の大きさなど必ずしも抜歯をしないことが最善とは言えない場合も存在します。マウスピース矯正の場合は、一体どんな治療が行われるのでしょうか。

誤解1 抜歯をする治療はマウスピース矯正は行わない

従来のマウスピース矯正は、抜歯をする矯正には向かないと言われていました。そのため、抜歯が必要となる矯正はマウスピース矯正でなく、ほとんどがワイヤー矯正を行う症例が多くありました。

しかし、マウスピース矯正の一つであるインビザラインは現在多くの症例に適用することができます。インビザラインはプラスチックの原料で作られており、素材は粘弾性があり、歯との適合が改良されています。それにより、歯を前後に動かすことが可能になり、抜歯を行ったスペースへの歯の移動にも適しています。

誤解2 抜歯をすることで治療期間が大きく変わる

抜歯をしない分、スペースを作り出すことに時間がかかり、結果的に治療期間が長くなるのでは、という誤解もあります。しかし、抜歯をするとスペースが大きく開く為、その分歯を並べることに時間がかかります。

抜歯をするから早い・遅いということはなく、トータルの治療期間に影響することで多い要因は、矯正中に虫歯や歯周病などにかかり、他の治療を優先させる必要が出てきてしまった場合や、マウスピース矯正装置を十分な時間装着しなかったなどの日頃のケアや習慣によるものです。

治療期間も大切ですが、確実に満足のいく治療結果を得られるように、自分に合った治療計画を十分に理解した上で治療をスタートすることが大切です。

抜歯をしないデメリットとは

抜歯を行うことの大きなデメリットは残存歯が少なくなってしまうことですが、抜歯を行わない矯正はどんなデメリットがあるのでしょうか?

歯科医師の判断で抜歯をせずに理想の歯並びに矯正できる程度の症例であれば非抜歯での矯正でトラブルが発生する可能性は低いですが、抜歯をして動かすスペースを作る必要があるほどの症例で無理に抜歯をせずに矯正を進めてしまった場合は、トラブルが起こる可能性があります。

無理な非抜歯矯正を行うことにどのようなデメリットががあるのか解説していきます。

「後戻り」する可能性

無理のない治療シミュレーションを行うことで、治療が終了した後に元に戻ろうとする力を弱めることができます。、いわゆる「後戻り」コントロールです。。特に、非抜歯矯正で歯がぎゅうぎゅうに余裕なく並んだ状態ですと後戻りしやすいと言われています。

ただし、これは非抜歯だけにある可能性ではなく、抜歯をした矯正治療を行った場合でもしっかりとしたアフターケアや治療計画を行わなかった場合、後戻りする可能性は十分にあり得ます。

治療が完了した後も、歯の特性を理解した上で、せっかく手に入れた理想の歯並びが崩れないようにリテーナーを歯科医師に指示された通りに付けるなどしてケアを怠らないようにしましょう。

歯茎が後退する可能性

これは矯正全体に言えるリスクではありますが、無理に歯を動かしたり負担をかけることで歯茎が下がって見えてしまう(歯茎の後退)が起こる可能性があります。

特に、顎の骨が小さく歯の生えるスペースが不十分な症例で無理に非抜歯矯正を行ってしまった場合、無理やり歯の生えるスペースを広げることになるため、歯が歯槽基底(歯茎の最も深いところの幅)の外側に押し出され、歯根が露出してしまう可能性があります。歯根が露出すると歯茎が下がって(後退して)見える上、知覚過敏の症状が出たり露出したところが虫歯になるなどのリスクがあります。

口元の印象の改善量

歯を抜かないことで残存歯が減らないというメリットはありますが、やはり口元の印象は歯を抜いて治療する方が変化のインパクトが大きいことが多いです。

特に口元の突出感が大きい方のほうが、抜歯をした方が良いケースが多くみられます。ご自身の今の状況、ゴールとする状態を歯科医師に相談して治療計画を決めましょう。

抜歯をしないマウスピース矯正法

適応される症例は歯科医師の判断によりますが、抜歯をしない際のマウスピース矯正方法について具体的にご紹介します。

奥歯を動かす

歯を動かすスペースがない場合は、一般的に小臼歯(前から数えて4番目の歯)を抜歯することが多いです。その空いたスペースを利用して歯を並べていく治療法があります。

しかし、マウスピース矯正の一つであるインビザラインでは、ワイヤー矯正が不得意な、「奥歯を後ろに動かす」ということを得意としています。そのため、本来は抜歯をしてスペースをつくる場合でも、奥歯を後ろにずらすことで新しくスペースを作り、そのスペースを利用して歯を並べることも可能です。

歯を削ってスペースを作る

ディスキングといって、歯のエナメル層を少し削ってスペースを作り、そのスペースを利用して歯を並べる治療法です。一本あたり0.3mm程削るので10本削ると3mmほどのスペースを作ることが可能となっています。

V字をU字にしてスペースを確保

歯槽骨は本来U字の形をしていますが、何らかの原因によりV字になってしまうことがあります。V字になってしまった歯列をU字に戻し、本来の位置に変えていくことで歯を並べるスペースを確保することができ、前歯を後方に下げることができます。

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この記事の監修医

小山安徳 先生

こやまやすのり

パラシオン歯科医院 院長

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