矯正基礎知識

この記事の監修医: 植田憲太郎

歯並びが綺麗だとなんとなく笑顔が素敵に見えませんか?

矯正に何となく興味があり、どんな方法があって、どのぐらいの期間や費用がかかるのか知りたい方、自分の身体のことだから失敗したくないという方へ、見た目以外の矯正の必要性や放置したときのリスク、矯正の仕組みと相場をご紹介します。

歯並びの種類も解説いたしますので、自分の歯並びと照らし合わせながらお読みください。

見た目だけじゃない矯正治療の必要性

矯正治療で歯並びを整えることは見た目が美しくなるだけでなく、口や全身の機能の改善に役立ちます。

歯並びが悪いままだと噛み合わせや口腔ケア不足によって口のトラブルを引き起こしたり、全身の健康や機能に悪い影響を与えたりします。

虫歯や歯周病、口臭を防ぐ

歯並びが悪い方は歯磨きがしにくいため、歯の汚れが原因で起こる虫歯や歯周病、口臭発生のリスクが高いです。

歯並びを整えると歯の凸凹が減って歯磨きがしやすくなるので口を清潔に保ちやすくなり、リスクを抑えられます。

噛み合わせの改善

噛み合わせが悪いと一部の歯だけに負担が掛かるため、歯の神経が刺激を受けて炎症を起こす歯髄炎や歯周病の悪化、顎の関節に負担が掛かって動きが悪くなったり痛みが生じる顎関節症などを引き起こす可能性があります。また、虫歯治療を受けた経験のある歯が噛む力の負担で割れたり折れたりすることもあります。

また、食事の際に食べ物を上手く噛み砕けないために口周りや首、肩の筋肉に負荷がかかり肩こりや筋緊張性の頭痛が生じることや、丸飲みすることで胃腸に負担が掛かるなど、全身的にも悪い影響を与えることがあります。

呼吸機能の改善

出っ歯や受け口で物理的に口が閉じられないことが原因で口呼吸になっていると、アレルギー性物質や細菌やウイルス、冷たい外気がダイレクトに身体に入ってくるため、アレルギー性鼻炎や免疫力の低下、また、上気道感染症などを引き起こす可能性があります。

歯並びを整えて顎のバランスを改善し、唇が閉じられるようになれば、口呼吸を改善できる可能性があります。

発音機能の改善

歯の位置と舌、唇は喋るときに音を構成する大切な要素です。

歯並びを改善することで、物理的に唇が上手く閉じられないことや、舌が上手く動かないこと、歯と歯の間から空気が漏れてサ行が発音しにくいなどの発音機能を改善できます。

歯並びの種類

歯並びは上下の顎の大きさや位置のバランスによる骨格的な特徴と、歯の生え方によって分類されますが「上の顎が大きくて下の前歯が凸凹に生えている=出っ歯で叢生(そうせい)」のように混在していることがほとんどです。

出っ歯(上顎前突)

出っ歯

下の前歯よりも上の前歯が4mm以上前に出ている状態は、日本人の不正咬合で叢生(そうせい)に次いで2番目に多い歯並びです。

鼻腔の発達が不十分で口呼吸になる傾向があり、ドライマウスによる虫歯や歯周病のリスクが高いです。

【主な原因】

  • 上顎の過成長もしくは下顎の劣成長により骨格的に上顎が下顎より大きい
  • 歯が斜め前に向かって傾いている
  • 顎が十分に発育せず歯の並ぶスペースが足りない
  • 前歯が大きい
  • 4歳過ぎの指しゃぶりや舌を前に押し出す癖など

受け口(下顎前突)

受け口

反対咬合とも呼ばれ、上の前歯よりも下の前歯が前に出ている状態です。

気道が圧迫されやすいので口呼吸になりやすく、サ行が発音しにくい、舌足らずな喋り方になるなどの発音障害が起こりやすいです。

顎の成長とともに悪化する傾向があり、下顎の発育がピークを迎える思春期ごろにいきなり受け口になったと感じることがあります。

【主な原因】

  • 下顎の過成長もしくは上顎の劣成長により骨格的に下顎が上顎より大きい
  • 下の歯が斜め前に向かって生えている
  • 舌や唇の筋肉の癖など

開咬(オープンバイト)

開口

噛んでも上と下の前歯が閉じない状態です。

唇を閉じる力が弱くて口呼吸になる傾向があり、ドライマウスによる虫歯や歯周病を引き起こすリスクや、噛み合わせたときに奥歯にのみ力が掛かるので歯の寿命が短くなるリスクがあります。

遺伝的に骨格性の問題がある場合は、開咬の原因となる指しゃぶりの晩期残存や舌癖などが無くても成長とともに少しずつ開咬になることがあります。

【主な原因】

  • 4歳を過ぎてからの指しゃぶり
  • 上下の歯の間に舌を押し出す癖
  • 顎の大きさや形のアンバランス

叢生(そうせい)

そうせい

乱杭歯とも呼ばれる八重歯を含む歯並びで、歯が前後や上下に乱れて生えています。

不正咬合の中で約40%を占める最も症例数の多い歯並びで、出っ歯や受け口などの骨格性の不正咬合と混在することがあります。

噛み合ったときに上下歯が強くぶつかるところのみ歯が斜めに削れる、歯磨きが難しいので虫歯や歯周病になる、噛み合わせが悪いため顎関節症になるなどのリスクが高いです。

【主な原因】

  • 顎が小さくて歯が生えるスペースが十分に無い

すきっ歯(空隙歯列)

すきっぱ

歯と歯の間に隙間がある状態で、食べ物が挟まりやすく見た目が気になるだけでなく、隙間の大きさによっては発音障害を引き起こすことがあります。

【主な原因】

  • 顎に対して歯が小さいか歯に対して顎が大きい
  • 生まれつき歯の本数が足りないなどの先天的欠損
  • 前歯を舌で押したり唇を噛んだりする癖

矯正器具の種類と費用・期間の目安

歯並びを整えるには、歯や顎そのものを動かして治療する方法と歯を削り人工の歯を使って綺麗に見せる方法があります。

歯並びや噛み合わせの状態によって適応範囲が異なり、矯正の方法によって口や身体に与える影響、使用する矯正器具、後戻りの有無なども異なります。

歯科医師の判断によって適用される矯正方法は違いますが、自身の歯並びで治したいポイントや使いたい矯正器具の希望をあらかじめ整理して伝えることが矯正成功への第一歩です。

マウスピース矯正

透明なマウスピースを1日20〜22時間ほど装着し、1〜2週間ごとに少しずつ形の違うマウスピースに交換して歯を動かす方法です。

従来の矯正の目立つ、痛いという悩みをほとんど気にしなくて良い画期的な方法で、複数のマウスピース矯正メーカーがあります。

基本的にはそれぞれのシステムを導入している歯科医院へ定期的に通院して治療を受けますが、ほぼ通院不要でオンラインと宅配のみで矯正が完結するメーカーもあります。

【メリット】

  • 目立たず痛みが少ない
  • 歯磨きや食事のときに自分で取り外せるので衛生的で違和感が少ない
  • 矯正用のワイヤーを歯に着けないので、装置が外れたり当たったりするトラブルが起こりにくく通院回数が少ない
  • 抜歯しない
  • 金属アレルギーのある人にも使える

【デメリット】

  • 自分で取り外せるため、装着時間や交換スケジュールなどの自己管理を徹底する必要がある
  • ワイヤー矯正と比べて適応範囲が限られる
  • 後戻りがあるので保定が必要

【費用】

部分矯正なら8万円以上、全体矯正なら80〜100万円です。

いずれも必要なマウスピースの枚数に応じて変わり、別途調整料や装置代、検査費用が掛かることがあります。

【期間】

部分矯正なら数カ月から1年以内、全体矯正なら1〜3年ほどです。

ワイヤー矯正

歯にワイヤーと金属やセラミックでできたブラケットを着けて歯を動かす方法で、1カ月に最低1回通院して歯科医師にワイヤーを調整してもらいながら治療を進めます。

【メリット】

  • 最も歴史と実績のある方法でほぼすべての症例に適応できる

【デメリット】

  • 装置が目立ちやすく、違和感が大きい
  • マウスピース矯正と比べて歯を動かす痛みが大きい
  • 歯磨きがしにくいので虫歯や歯周病のリスクが高い
  • ワイヤーが外れたり当たったりして痛いなど、緊急通院が必要になることがあるため通院回数が多い
  • 抜歯が必要で、顎のバランスによっては入院して骨を切る手術が必要なことがある
  • 後戻りがあるので保定が必要
  • 金属アレルギーがある方は担当医への慎重な相談が望ましい

【費用】

部分矯正なら30万円以上、全体矯正なら80〜120万円で、別途調整料や装置代、検査費用、手術費用が掛かることがあります。

【期間】

部分矯正なら数カ月から1年以内、全体矯正なら1〜3年ほどです。

セラミック矯正

歯そのものを動かすのではなく、歯を削ってセラミックでできた人工の歯を被せて歯並びが整ったように見せる方法です。厳密な意味では歯並びを治すのではなく、人工物で歯の見た目を変える処置です。

【メリット】

  • ワイヤー矯正やマウスピース矯正と比べて圧倒的に短期間で終わる
  • 歯の大きさや形、色が選べる
  • 歯を動かしていないので後戻りが無い

【デメリット】

  • 歯を大きく削るので侵襲が大きく、特に神経を抜くセラミック矯正は歯が脆くなりやすいため歯の寿命が短くなる可能性が高い
  • 老化などにより歯茎と被せ物の間にズレが生じて合わなくなることがある
  • 劣化や破損による作り直しが必要なことがある
  • 軽度なズレやすきっ歯などに適応症例が限られる

【費用】

平均すると1本7万円以上です。

歯科医院や被せ物の素材により大きく異なり、天然歯に近い審美性と高い強度を合わせ持つ素材だと1本10万円以上する場合があります。

【期間】

1〜3カ月以内と短く、通院回数はカウンセリングも含めて3〜4回ほどです。

歯列矯正を検討する前に
知っておきたい基礎知識

おすすめのマウスピース矯正メーカー

hanaravi

  • hanaraviはサブスクリプション型のマウスピース矯正法で、毎月の費用が決まっています。また、LINEで相談ができるため不安や悩みを解消しながら、治療を最後まで続けることができます。

インビザライン

  • インビザラインはアメリカのアライン・テクノロジー社が提供する、世界100カ国以上で800万人を超える治療実績を持つマウスピース矯正メーカーです。新しい素材の導入や治療に関する研究などの独自のテクノロジーを用いて美しい歯並びを目指せるシステムです。

キレイライン

  • キレイラインは3Dプリンターや最新の機器を用いることで、効率的で高精度なマウスピース矯正を行うことができます。たくさんの歯列データと最新技術が蓄積されたソフトウエアを用いて歯の移動を最大、かつ痛みを極力抑えた治療を行います。

oh my teeth

  • oh my teethは日本初のD2C(Direct to Consumer)サービスを用いてマウスピースの製造、販売、企画をすべて自社で行う、マウスピース矯正メーカーのひとつです。矯正情報のデータベース化やAI、3Dプリンターなどの活用により、通院回数ほぼゼロと従来の矯正よりも費用を平均70%抑えた画期的な矯正を提供しています。

この記事の監修医

植田憲太郎 先生

うえだけんたろう

医療法人UDC 理事長